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よいではまいか

日日と感覚と琵琶が

ダンサー・イン・ザ・パブ

今日、カラオケパブ?なるものに、はじめて連れてかれました。

行ったことない人に説明すると、カラオケとぽつんとしたステージが設置された酒場です。
お酒飲んだりつまんだりしつつ、歌いたい人は1曲いくらでステージ上で歌うことができるのです。当然、ほかのお客さんもみているなかで歌うわけです。

はじめは慣れず、どぎまぎしながら、なんでこんな知らない人の前に晒される羞恥プレイを、なんて声を震わせてましたが、何曲か歌っているうちにわりと気持ちよくなってきました。
ほかのお客さんもべらぼうにうまいわけでなかったし、ただ好きで歌ってわいわいするよ、ナイスファイト!な空気でした。


で、わたしたちがそこそこにほぐれてきた頃、男女二人組のお客さんが入店してきました。
社長の風格匂わせる老紳士と、スリムで知的な三十代とおぼしき女性でした。
しばらくお二人は歓談されている様子でした。
と思ったら、女性がすっくと立ち上がり、ほかのお客さんの歌に合わせて猛烈に踊りはじめたのです。
しかもノリノリでゴキゲンなソングではなく、演歌でです。
力強くのびやかな歌声に女性のダンスがフュージョンするわけですが、それはもう、まったく合っていないのです。
女性のダンスは、チャチャチャとかそういった系統の激しめな社交ダンスに近しいものと思われました。でも詳細はわかりません。
それをたった一人で踊っているのですが、そのさまは、もはや踊っているというより、ひたすら情熱のおもむくまま、くねり狂うという様相でありました。
くねくねなのに、キレッキレなのです。
圧巻でした。

女性は、一曲終わるたびに席に戻り、次の曲がはじまるとすぐさまステージ脇にくりだし、踊るのでした。
その一連の動きに、まったく迷いを感じさせません。
席に引き返す彼女は、重大な任務を完遂したような、晴れやかで勇ましげな表情をしていました。

ほかのお客さんは好き好きに、演歌やらバラードやらサンバやら入れるのですが、彼女は曲によってその振付を変容させていました。
ひどく腰を振ったり、腕先をしならせたり、過剰にステップを踏んだり、とかく多様な動きをしていました。
けれど、どんな動きをしていようと、まあおそろしく曲と合っていないのでした。

ほかのお客さんは、「いいぞいいぞ!」と、やんややんや拍手しました。
「歌がうまいのに、なんかへんな踊りが目ざわりだわ」くらいのことをもらすお客さんもいました。
彼女は外野に目もくれず、踊りつづけていました。


事件に巻き込まれたような、天災が目の前で起こっているような心もちで、わたしはダンスを眺めていました。

なんともいえず得体のしれない元気が、でました。




もりや