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よいではまいか

日日と感覚と琵琶が

立って死ね

映画 こころとからだとあたま
映画『百円の恋』を観て。

無職の主人公・一子がぐだぐだ生活の温床となった実家を飛びだし、百円ショップで深夜バイトしながら恋(らしきもの)をしたり傷ついたりしながらうっかり始めたボクシングにのめりこみ試合にまで出るけどボコボコにされたよ、という話。

(というとなにか大事なものが抜けおちてるようではありますが、まちがってはいない)


主人公演じる安藤サクラの身体性の変化がとてもおもしろかった。
はじめ、無職で実家にこもっているときは、軸がない、軟体動物の運動だった。走っても足は引きずるようだし、自転車をぬめぬめと漕いだ。バイトのレジ打ちものろのろ、なのに落ちつきがない。

好きになった男がきっかけでボクシングを始めるものの、風にあおられるビニール袋みたいな、体重のまったく乗っていないパンチ。意志のないパンチ。

ところが男に逃げられてから、一子のからだが、唐突に密度を持ち始める。
腰が入って、重く鋭くなったパンチ。風を切る。ステップは、切り刻むように。
タンクトップ一枚なのに、密集した空気を鎧としてまとっているように、からだはかたく張り詰めていた。輪郭がみえた。


意志も深い欲求も遠い場所に捨ててきたような一子が、したたかに殴られ、崩れ落ち、呼吸がひどく上がりながらも最後まで試合にしがみついていた。
終わってから、「勝ちたい」と、泣いた。

熱と、研ぎ澄まされていく視線、表情、からだ、とても圧力のある映画でした。

5/29まで、渋谷UPLINKで上映してますよ。


もりや
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